ポジティブ心理学で変わる 自分の価値観を見つけるシンプルな習慣 失敗を恐れない自分へ
私たちはしばしば、失敗することや、他人にどう思われるかを気にしすぎて、心の中で本当にやりたいことや、自分にとって本当に大切なことを見失ってしまうことがあります。新しいことに挑戦しようとしても、「もしうまくいかなかったらどうしよう」「笑われたら嫌だな」といった不安が頭をよぎり、結局一歩踏み出せないまま、時間だけが過ぎていく。そんな経験はございませんか。
失敗への恐れを和らげ、自分らしい一歩を踏み出すためには、ポジティブ心理学の知見が役立ちます。特に、「自分の価値観」を明確にすることは、周囲の評価に振り回されず、自分にとって本当に意味のある選択をするための強力な羅針盤となります。
なぜ自分の価値観を知ることが大切なのでしょうか
自分の価値観とは、あなたが人生で最も大切にしたいこと、行動の基準となる考え方や信念のことです。例えば、「成長」「貢献」「安定」「自由」「正直」「創造性」などが価値観として挙げられます。
ポジティブ心理学において、自分の価値観に基づいた行動は、内発的な動機付け(自分の中から湧き出るやる気)を高め、ウェルビーイング(心理的な幸福や健康)に貢献すると考えられています。自分の価値観が明確になると、たとえ失敗しても「これは自分が大切にしていることのためにやったことだ」と納得しやすくなり、自己批判に陥りにくくなります。また、困難な状況でも、自分の価値観を指針とすることで、粘り強く取り組む力(レジリエンス)が養われます。
つまり、自分の価値観を知ることは、失敗への恐れを減らし、自分軸を持って前向きに行動するための土台となるのです。
シンプルな習慣で自分の価値観を見つける
「自分の価値観を見つける」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。しかし、日常生活の中で実践できる、いくつかのシンプルな習慣を通じて、少しずつ自分にとって大切なものに気づくことができます。
ここでは、すぐにでも始められる具体的な習慣をいくつかご紹介します。特別な時間や場所は必要ありません。ノートの隅やスマートフォンのメモ機能を使って、気づいたことを書き留めることから始めてみましょう。
習慣1:心地よいと感じる瞬間を書き出す
どんな活動をしている時、どんな状況にいる時に、あなたは「心地よい」「楽しい」「満たされている」と感じるでしょうか。それは、一人で静かに本を読んでいる時かもしれませんし、誰かと深く語り合っている時、何かを創り出している時、あるいは自然の中にいる時かもしれません。
これらの心地よい瞬間は、あなたが無意識のうちに大切にしている価値観が満たされているサインです。例えば、読書で学ぶことに喜びを感じるなら「成長」や「知性」、誰かとの語り合いなら「つながり」や「共感」、何かを創るなら「創造性」や「自己表現」といった価値観が隠れている可能性があります。
- 実践のヒント: 1日に1回でも良いので、「今日の心地よい瞬間」を振り返り、どんな状況だったか、なぜ心地よかったのかを簡単にメモしてみましょう。
習慣2:「嫌だ」と感じる状況から、大切にしたいことを逆算する
ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も、自分の価値観を映し出す鏡となります。あなたが強く「嫌だ」「苦痛だ」「納得できない」と感じる状況や他者の言動は、あなたの価値観が侵害されているサインかもしれません。
例えば、不公平な扱いを受けて怒りを感じるなら「正義」や「公平」、約束を破られて失望するなら「誠実」や「信頼」、自分の意見を言えずに息苦しさを感じるなら「自由」や「自己尊重」といった価値観を大切にしている可能性があります。
- 実践のヒント: 最近「嫌だな」と感じた出来事を一つ思い出し、その状況の何が嫌だったのかを具体的に書き出してみましょう。そこから、自分が本当はどのようにあってほしいと願っているのか、何を大切にしたいのかを考えてみてください。
習慣3:過去の「成功」や「失敗」から、大切にしていた要素を振り返る
過去の経験も、あなたの価値観を探る手がかりとなります。あなたが「成功」だと感じた経験を振り返り、その達成感は具体的に何から得られたのか、どんな要素が重要だったのかを考えてみましょう。単に目標を達成したことだけでなく、その過程で工夫したこと、協力した人、学んだことなどに注目します。
また、「失敗」だと感じた経験からも、多くの学びが得られます。その失敗から何を学びたいと思ったのか、次に活かしたいと思ったことは何かを振り返ることで、困難な状況でもあなたが大切にしようとする価値観が見えてきます。
- 実践のヒント: 過去の出来事を一つ取り上げ、「その時、自分が最も大切にしていたことは何だっただろう?」と問いかけてみましょう。
習慣4:理想の自分や、尊敬する人の言動から推測する
あなたが「こんな人になりたい」と思う理想の自分像や、あなたが心から尊敬する人の言動には、あなたが憧れる価値観が反映されています。その人がどのような行動や考え方を大切にしているように見えるか、そしてなぜそれに惹かれるのかを考えてみましょう。
例えば、常に学び続けている人に尊敬を感じるなら「成長」、困っている人を放っておけない人に惹かれるなら「優しさ」や「貢献」、自分の信念を貫いている人に感動するなら「誠実」や「勇気」といった価値観が、あなた自身の中にも大切にしたいものとして存在している可能性があります。
- 実践のヒント: 尊敬する人(実在の人物でも、物語の登場人物でも構いません)を一人思い浮かべ、その人のどんな点に惹かれるのか、それはどんな価値観に基づいているように見えるのかを考えてみましょう。
見つけた価値観をどう活かすか
これらの習慣を通じていくつかの価値観の候補が見つかったら、それらをリストアップしてみましょう。そして、「これこそが自分にとって特に大切だ」と思えるものをいくつか(3~5個程度)選び出してみてください。
見つけた価値観は、あなたの行動や意思決定の指針となります。例えば、あなたが「成長」という価値観を大切にしているなら、新しいスキルの習得や挑戦は、たとえ失敗のリスクがあっても、価値観に沿った前向きな一歩だと捉えることができます。また、「つながり」を大切にしているなら、人間関係の維持や構築に時間とエネルギーを投資することは、あなたにとって意味のある行動だと確信できます。
完璧にすべての行動を価値観に合わせる必要はありません。しかし、大切な選択に迷った時や、失敗して落ち込んだ時に、「これは自分の大切な価値観に沿った行動だったか?」「この経験から、自分の価値観をどう活かせるか?」と立ち返ることで、自己肯定感を保ち、次の行動につなげやすくなります。
失敗を恐れず、自分らしい一歩を
自分の価値観を探求する旅は、自分自身を深く知る旅でもあります。一度見つけた価値観が、今後一切変わらないというわけではありません。人生のステージによって、大切にしたいことは変化していくものです。だからこそ、定期的に自分に問いかけ、価値観を確認する習慣を持つことも大切です。
失敗への恐れは、誰にでもある自然な感情です。その恐れをゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、自分の価値観を明確にし、それに沿った小さな一歩を踏み出す習慣を積み重ねることで、失敗を単なるネガティブな出来事としてではなく、自分にとって何が大切かを知るための学びや、自分らしい生き方を追求する上での通過点として捉えられるようになります。
今日から、ご紹介したシンプルな習慣の中から、一つでも取り入れてみませんか。小さなことから始めて、自分にとって本当に大切なものを確認していくことが、失敗を恐れずに、あなたらしい人生を歩むための確かな一歩となるはずです。