ポジティブ心理学で変わる 「自分の強み」を見つけるシンプルな習慣
ポジティブ心理学で変わる 「自分の強み」を見つけるシンプルな習慣
新しいことに挑戦しようと思っても、過去の失敗が頭をよぎったり、自分に自信が持てなかったりして、なかなか一歩を踏み出せないと感じることはありませんか。周りの期待に応えられるか不安になったり、「どうせ私には無理だ」と考えてしまったり。
もし、あなたが今、そんな気持ちを抱えているのなら、それは決して特別なことではありません。多くの人が、失敗への恐れや自分への自信のなさから、行動を躊躇してしまう経験を持っています。
しかし、私たちは皆、自分では気づいていないかもしれない「強み」を持っています。そして、その強みに気づき、意識的に活かすことは、失敗への恐れを和らげ、自分を肯定的に捉え、前向きな一歩を踏み出す大きな力になります。
この記事では、ポジティブ心理学の観点から、あなたの内にある「強み」を見つけるための、日常生活で簡単に取り入れられる習慣をいくつかご紹介します。難しいことは何もありません。今日からできる、小さな習慣から始めてみませんか。
ポジティブ心理学における「強み」とは何か
ポジティブ心理学では、「強み」を単に「得意なこと」や「能力が高いこと」だけではなく、以下のような要素を含むものと捉えます。
- 使うとエネルギーが湧いてくること: それをしていると時間を忘れたり、疲れるどころか元気になったりすること。
- 自然にできること: 努力している感覚があまりなく、当たり前のようにできてしまうこと。
- 学びが早いこと: その分野に関する知識やスキルを比較的容易に習得できること。
- 最高のパフォーマンスを発揮できること: その強みを使っているときに、最も自分らしくいられる感覚があること。
つまり、強みは、あなたが自然と行っている行動や考え方の中に隠されています。そして、その強みを認識し、意図的に使うことで、私たちはより生き生きと、そして自分らしく行動できるようになるのです。
なぜ「強み」に注目すると失敗への恐れが和らぐのか
自分の強みに気づき、それを活かす習慣を身につけることは、失敗への恐れを和らげる上で非常に有効です。それにはいくつかの理由があります。
- 自己肯定感の向上: 自分の得意なことや、自然とできてしまうことに気づくことで、「自分にはできることがある」という感覚が育まれます。これは、漠然とした自信のなさを打ち消す力になります。
- レジリエンス(立ち直る力)の強化: 強みを理解していると、困難に直面した際に「自分のこの強みを使って乗り越えよう」と建設的に考えることができます。失敗した場合でも、「強み」というよりどころがあるため、そこから学び、再び立ち上がろうという気持ちにつながりやすくなります。
- 挑戦への意欲: 自分の強みを活かせる場面だと分かれば、「これなら自分にも貢献できるかもしれない」という前向きな気持ちが生まれ、未知のことや難しいことにも挑戦しやすくなります。
あなたの「強み」を見つけるシンプルな習慣
それでは、具体的にどのような習慣を実践すれば、自分の強みを見つけられるのでしょうか。ここでは、特別な準備や時間が必要ない、簡単な方法をいくつかご紹介します。
習慣1: 小さな「うまくいったこと」を振り返る
毎日、あるいは週に一度でも構いません。ノートでもスマートフォンのメモでも良いので、その日・その週の中で「少しでもうまくいったな」「気分良くできたな」と感じた出来事を書き出してみましょう。
ポイントは、大きな成功でなくて良いということです。例えば、「頼まれごとをスムーズにこなせた」「相手の話をじっくり聞くことができた」「資料を分かりやすく整理できた」など、どんなに小さなことでも構いません。
そして、書き出した出来事について、「その時、自分はどんな行動をしたか?」「どんな考え方をしたか?」「何が良かったのだろうか?」と少し掘り下げて考えてみてください。
例: 「会議で自分の意見を分かりやすく伝えられた」→「資料を事前にしっかり準備した」「難しい言葉を使わずに話すよう意識した」「相手が理解しているか確認しながら進めた」
この振り返りを通して、あなたは自分が自然と行っている工夫や、役に立っている行動パターンに気づくことができます。これらの中に、あなたの「強み」のヒントが隠されています。
習慣2: 過去の「フロー状態」を思い出す
「フロー状態」とは、何かに没頭していて、時間の流れを忘れてしまうほど集中している状態を指します。ポジティブ心理学の研究者ミハイ・チクセントミハイ氏が提唱した概念です。
あなたが過去に、時間を忘れて没頭した経験はありませんか? それは仕事かもしれませんし、趣味やボランティア活動、あるいは日常生活の中の些細なことかもしれません。
- 子どもの頃に熱中したことは?
- 最近、時間を忘れて取り組んだことは?
- どんなことをしているときに、最も「自分らしい」と感じるか?
フロー状態に入りやすい活動は、あなたの強みが活かされている可能性が高いです。その活動内容や、その時に自分がどんなスキルや考え方を使っていたかを思い出してみましょう。
習慣3: 周囲からのフィードバックに耳を傾ける
他者からの見方は、自分では気づかない強みを教えてくれることがあります。
例えば、「〇〇さんのおかげで助かったよ」「〇〇さんのそういうところ、すごいね」のように、感謝されたり褒められたりした言葉を思い出してみてください。相手は、あなたの特定の行動や資質に価値を感じて伝えてくれたはずです。そこにあなたの強みが表れているかもしれません。
もし可能であれば、信頼できる友人や家族に「私がどんな時に一番輝いているように見える?」「私の良いところは何だと思う?」と率直に尋ねてみるのも有効です。少し恥ずかしいかもしれませんが、他者からの温かいフィードバックは、自分自身の見方を変えるきっかけになります。
より体系的に自分の強みを知りたい場合は、ポジティブ心理学でよく用いられる「VIA調査(Values in Action Inventory of Strengths)」のようなオンラインツールを試してみるのも一つの方法です。これは有料・無料のものがありますが、自分の持つ可能性のある強みのリストを知る手助けになります。(ツールの結果はあくまで参考として、自分自身の感覚と照らし合わせることが大切です。)
見つけた「強み」を日々の生活に活かす
自分の強みのヒントが見つかったら、次はそれを意識的に日々の生活で使ってみる習慣を始めてみましょう。
例えば、「私は人の話をじっくり聞くのが得意かもしれない」と感じたら、普段の会話でより意識的に相手の話に耳を傾けてみる。「物事を分かりやすく整理するのが苦にならないな」と思ったら、会議の議事録を工夫してみる、家の中を整理整頓してみる、など。
大きな変化を求めなくて構いません。見つけた強みを「こんな場面で使ってみようかな」と試してみる、その小さな行動の積み重ねが大切です。
まとめ
失敗を恐れる気持ちは、誰にでも起こりうる自然な感情です。しかし、その感情に囚われすぎず、前向きに一歩を踏み出すためには、自分自身の内にある力、つまり「強み」に気づくことが有効です。
この記事でご紹介した「小さな成功体験の振り返り」「フロー状態の想起」「周囲からのフィードバックへの耳傾け」といったシンプルな習慣は、あなたの隠れた強みを見つけるための入り口となります。
見つけた強みは、完璧に使いこなす必要はありません。まずは「これかな?」と思う強みを意識してみる、日常生活の小さな場面で使ってみる、という試みを始めてみてください。
自分の強みを認識し、それを頼りにすることは、失敗への過度な恐れを手放し、「自分にはできることがある」という確かな感覚を育むことにつながります。焦らず、あなたのペースで、小さな一歩を踏み出していきましょう。あなたの内に秘められた強みが、きっとあなたを力強く支えてくれるはずです。