「ありのままの自分」を受け入れる ポジティブ心理学で失敗を恐れない習慣
失敗を恐れる気持ち、その根っこにあるもの
新しいことに挑戦しようとすると、つい足がすくんでしまう。過去の失敗が頭をよぎり、「またうまくいかないかもしれない」と不安になる。あるいは、周りの人と比べて「自分には無理だ」と感じてしまう。
そうした失敗への恐れや自信のなさは、多くの大人が抱える悩みです。特に、完璧を目指してしまったり、他人の評価を気にしすぎてしまったりすると、一歩踏み出すことが難しくなります。
しかし、その失敗への恐れを乗り越えるための鍵の一つが、「ありのままの自分を受け入れる」という考え方にあることを、ポジティブ心理学は示唆しています。この記事では、ポジティブ心理学の知見に基づき、「完璧ではない自分」を肯定し、失敗を恐れず前向きに進むための具体的な習慣をいくつかご紹介します。
ポジティブ心理学と「ありのままの自分」
ポジティブ心理学は、人がよりよく生きるための科学的なアプローチです。その中で、「自己受容」は重要なテーマの一つとされています。自己受容とは、自分の長所だけでなく、短所や欠点も含めて、ありのままの自分を肯定的に受け入れることです。
完璧ではない自分、失敗することもある自分を受け入れることは、他者との比較から生まれる焦りや劣等感を和らげ、内側からの安心感をもたらします。この安心感があるからこそ、結果がどうであれ、挑戦すること自体に価値を見出し、失敗を恐れすぎずに行動できるようになるのです。
では、具体的にどのようにして「ありのままの自分」を受け入れ、失敗への恐れを和らげていけば良いのでしょうか。日常生活で実践できる習慣をいくつか提案します。
習慣1：自分への「優しい言葉」を意識する
私たちは、うまくいかなかった時や失敗した時に、自分自身に厳しい言葉を投げかけがちです。「どうしてこんなこともできないんだ」「やっぱり自分はダメだ」など、心の中で自分を責めていませんか。
こうしたネガティブなセルフトークは、自己肯定感を低下させ、ありのままの自分を否定することにつながります。まずは、自分がどんな時に、どんなネガティブな言葉を自分にかけているのかを意識することから始めましょう。
そして、その言葉を意識的に変える練習をします。例えば、「どうしてこんなこともできないんだ」と思った時、「今回はうまくいかなかったけれど、次は違うやり方を試してみよう」「大丈夫、誰にでも失敗はある」のように、自分を励ますような、あるいは解決に焦点を当てるような言葉に言い換えてみます。
まるで親しい友人に話しかけるように、自分自身にも優しい言葉を選んでみてください。最初はぎこちなく感じるかもしれませんが、繰り返すうちに自然と前向きなセルフトークが増え、ありのままの自分を受け入れやすくなっていきます。
習慣2：「完璧でなくて良い」と自分に許可を出す
失敗を恐れる背景には、「完璧でなければならない」「失敗は絶対にいけないことだ」という強い思い込みがある場合があります。しかし、現実は常に不確実であり、全てをコントロールすることはできません。そして、人間は誰しも完璧ではありません。
「完璧でなくて良い」と自分に許可を出す習慣を持ちましょう。新しいことを始める時、「まずは〇〇までやってみよう」「△△くらいできれば十分だ」のように、無理のない範囲で目標を設定します。そして、たとえその目標に達しなかったとしても、自分を責めすぎないようにします。
例えば、新しいスキルを学ぶなら、「完璧に使いこなす」ではなく「基本的な操作ができるようになる」を最初の目標にする。「失敗しないように完璧に準備する」のではなく、「まずはできる範囲で準備して始めてみる」とハードルを下げてみます。
完璧を目指すプレッシャーを手放すことで、行動へのハードルが下がり、失敗を恐れずに一歩を踏み出しやすくなります。そして、小さな一歩を踏み出した自分自身を肯定的に評価することが重要です。
習慣3：自分の「小さな強み」に目を向ける
私たちは、自分の欠点やうまくいかないところに目が行きがちですが、誰にでも必ず「強み」があります。それは特別な能力である必要はありません。「人の話を丁寧に聞ける」「約束を守る」「毎日欠かさず水を飲む」といった、ごく日常的なことも強みになり得ます。
ありのままの自分を受け入れるためには、そうした自分の「小さな強み」にも意識的に目を向けることが大切です。ポジティブ心理学では、自分の強みを知り、それを活かすことが幸福度を高めることが分かっています。
例えば、一日の終わりに「今日、自分のどんなところが活かせただろうか」「どんな小さなことでも、自分はこんなことができたな」と振り返る習慣をつけてみてください。あるいは、身近な人に「私の良いところ、どんなところだと思う？」と聞いてみるのも良い方法です。
自分の強みを認識し、それを意識的に使うことで、「完璧ではないかもしれないけれど、自分にはこんな良いところもある」という肯定的な自己認識が育まれます。これは、失敗した時でも自分自身を支える力となります。
失敗は「ありのままの自分」ができる経験
これらの習慣は、どれもすぐに劇的な変化をもたらすものではないかもしれません。しかし、日々の小さな積み重ねが、確実にあなたの心持ちを変えていきます。
ありのままの自分を受け入れることは、自分を甘やかすこととは違います。それは、完璧ではない自分を認め、その上で、失敗も成功も経験として受け止め、前に進むための土台を築くことです。
失敗は、完璧ではない「ありのままの自分」だからこそできる経験であり、そこから学びを得て成長する機会でもあります。大切なのは、失敗そのものを恐れるのではなく、失敗した時に「そんな自分も大丈夫だ」と受け入れられる心の強さを持つことです。
まずは小さな一歩から
ご紹介した習慣を一度に全て実践する必要はありません。まずは一つ、今日から「これならできそう」と思えるものを選んで試してみてください。
自分への言葉遣いを少し意識してみる。完璧でなくて良いと心の中で唱えてみる。自分の小さな良いところに一つだけ目を向けてみる。
その小さな一歩が、ありのままの自分を受け入れ、失敗への恐れを手放し、あなたらしい人生を前向きに歩むための大きな力となるはずです。応援しています。